「さすがに生徒手帳の中身までは見れなくて、さおりかどうか確かめなかった。いや…、ホントは怖かったのかもな。もしぶつかってきた女子が本当にさおりだったとしたら、さおりには彼氏がいることになる」
「なんで…、彼氏がいるって思っちゃったの?」
「俺…、さおりのことを忘れようと思って、告白された女、片っ端から付き合っていった。だから…、さおりも同じだと思ってたんだ。俺のことを忘れるつもりで違う男と付き合ってるんだって思い込んでしまった」
じゃあ…、高校生の時に聞いたあのウワサは、あながち間違ってなかったんだ…。
でもそれは、優祐が変わってしまったわけではない。
むしろ、変わっていない証明であることに、あの時の私は全く気付かなかったんだ。
「私が…、優祐の言葉通り、自由にしてると思ったの?」
もしかして、あの『自由に生きろ』の意味はやっぱり…、『優祐に縛られず生きろ』ってことだったの…?
「うん。さおりならいつか気付いてくれると思ったから、別れ際に言ったんだ。もしさおりにいい人が見つかっても、別れてる俺にはその付き合いを止める権利もないからな」
優祐…、そんなことまで考えてあのセリフを言ったんだ…。
それだけで、少し嬉しくなった。
隣で屋上の手すりにもたれながら、ゆっくりと降る雪の様子を見ていた優祐は、また話し始めた。

