「中原と和幸、特別展望台って言って、ここよりももっと高い展望台まで登っていったよ。しばらくそこで時間つぶすって言ってた」



「そっか…」






温かいコーヒーが運ばれてきて、私と美奈はゆっくりとコーヒーカップに口を付けた。






「あっ、そうだ。中原からコレ預かってたんだった。他校の人だけど、拾ってくれたらしいよ」



「え…?」






美奈から手渡されたのは、私の生徒手帳。





落としてたことすら気付かなかった…。






「…それ、大事なものが挟んであるから丁重に扱ってって中原に言われたんだけど」



「大事なもの……、あっ、そうだった!」






漫画にしおり代わりとして挟んでいた優祐からの手紙。






ちょうど漫画を読み終わったから、挟むところがなくなって生徒手帳に挟んでたんだった。








私はペラペラと生徒手帳をめくって、もう古くてカサカサになった紙切れを取り出した。






「ああ、それのことか、大事なものって。さおりがしおりとして使ってるボロの紙」



「ただのボロ紙じゃないもん」



「そうだね。そんなボロボロになるまで大事にしてんだから」







優祐からの手紙。





…こんなの持ってるから、苦しんでるのかな、私。






そうだよ。



これは元々私宛てに書かれた手紙じゃない。





優祐が先生に、私に伝えてくれと頼んだ手紙なんだから。








東京なんてめったに来れるところじゃないし、いっそのことここに捨てて帰ろうかな…。






前に進むために。



未練が残らないように。









そう思って私は久しぶりに、丁寧にたたまれた紙切れをゆっくりと開いた。






「……あれ?」