「…っ!!」 あん時はただ、母親がいねぇことが寂しくて、切なくて、それで零れた涙だと思ってた。 けど、違うのかもしんねぇ。 ─…今、思い出した。 アイツが極端に家族の話を嫌がるようになったのは、多分、そん時からだ。 わかんねぇけど。 もうこれ以上、走るなんて無理だと思っていた。 不可能だと思っていた。 だけど今、俺は地面を蹴って駆け出していた。 ついさっきまで重たかった体、鉛のようだった足を、動かして。