世界で1番嫌いな人



『おっさん』


 後ろから少し高めの男の子の声が聞こえた。

 その瞬間、おじさんの低いうめき声が聞こえて、あたしの手は解放された。


『中学生に手出してんじゃねぇよ。さっさと消えろ』


 おじさんは舌打ちして、路地裏へ消えていった。


 こ、わかった。

 たぶんこの人が来てなかったら、今頃……。


『あの…、ありがとうございました…』


 深く深く頭を下げると、あたしが今日入学するひいらぎ学園の制服が目に入った。


 …もしかして、この人も?


 ゆっくりと顔を上げると、同じくらいの高さに綺麗な顔。


『お前さぁ…』


 男の子は少し顔をしかめた。