やけに無愛想な娘はぼぅとしていて母親に肩を支えられて席についた。

 年は悠真と同じくらい、母親が「みう」と名前を呼んでいたので名前はすぐに耳に入ってきた。

 年頃だったら隣に年の近い男は嫌じゃないのかと自分を棚に上げて思ったが、悠真のことなど全く気にする様子はなかった。

 悠真を挟んで、小さな窓から見える空港敷地内をじっと見ている。

 悠真としてはなんだか落ち着かなかったが手元のゲーム機操作を中断させて離陸に備えた。

 加圧とジェットエンジンの音、振動で小刻みに揺れる体が美羽の体に触れた。

 それでも美羽はまるで悠真などいないかのように、ぼんやりと視線を遠くに定めていた。

 機体は旋回しながら、地上を飛び立つ。

 機内放送も落ち着いて、手元のゲーム機へ改めてスイッチを入れる。イヤホンを耳に詰める前に、悠真は美羽に声をかけた。


「あの、トイレ行くときとかなんか踏んだりしちゃったらすみません。パリ着くまでよろしく」


 悠真の言葉に美羽はほんの少しだけ反応し、その反応を遮るように通路側についていた母親が笑顔を投げてきた。

「どうぞよろしく。お一人ですか?」

「えぇ、両親が今海外にいて、ちょっと来いって言われたもんで……」

「あらいいわね。学生さんかしら、大学生……?」

「高校3年です」

「美羽と同い年ね」