教室に着くと、もうすでに授業が始まっていた。
「先生、さっきまで、門の前に居たよな?」

「早いね」
僕は、静かに教室のドアを開けた。
「失礼しまーす!」
クラス全員の目線が、僕に向いた。
「遅いぞー!」
声をかけて来たのは、岡田だった。

「悪い、ちょっとな」

僕は、後ろに居た由梨を呼び出した。
「由梨?!」
一番最初に気付いたのは、折越さんだった。
クラス全員から拍手が起こった。

僕は、教壇に立ち、クラスの皆に挨拶をした。
「皆さん!えー、渡辺由梨さんが、帰って来ました!!」

「おかえりー」という声が、クラス中に響いた。
「もう、由梨は大丈夫です!ご心配おかけしました!」

「お前が言うなー!」
と岡田が言うと、皆が笑った。
「では、では!由梨から一言!」

「えっ」という表情と恥ずかしそうに、由梨は言った。
「ただいま」
「おかえり」という声が、もう一度、かかった。
「突然なんですけど、みんなに知っておいて欲しいことがあります。・・、私は、産まれつき心臓に、病気を持っています」
クラスが一瞬にして、静かになった。

由梨が、少し震えているのが分かった。

僕は由梨に近付き、背中にそっと手を置いた。
「でも、検査の結果もよくなって、皆さんのお陰で、またこのクラスに戻って来れました」
自分の病気の事を話すのは、由梨にとって、大きな決断だった。
「ありがとうございました!」
由梨は深々と頭を下げた。

自然と皆から拍手が起こった。