「この坂、キツいね」

「久しぶりだと辛いよな」
僕は、由梨のペースに合わせた。

時間は、気にしなかった。
手を繋ぎながら、ゆっくりと歩いた。
ふと、告白した日のことを思い出した。

あの時、初めて手を繋いだ。
由梨は何も言わず、握り返してくれた。
「爪、切ってね」と、あの時も言われたな。と少し思い出して、一人で笑ってしまった。
「何、笑ってんの?」

「いや、ちょっと思い出してさ」

「気持ち悪い」

「気持ち悪いって言うな」
笑い合って、この坂を登れるのもあと少し、高校を卒業すれば、今みたいに毎日会う事も無くなる。

二人の時間を大切にしようと思った。
「先生!」
校門の前に立つ高山先生に、僕は気付き、声をかけた。
「北山!おはよう!あれ?お前?!渡辺くんという人がありながら?!!って、渡辺くんじゃないか?!」
高山先生は、目を丸くさせて言った。
「なんだよ。そのノリツッコミ?」
と、僕が言うと、由梨は、少し笑った。
そして・・

「先生、ただいま」
と声をかけ、頭を下げた。
「もう、大丈夫なのか?」

「はい。ご心配おかけしました」

「そうか、あんまり無理するなよ」

「はい」
学校のチャイムが鳴った。
「ほら、授業始まるぞ!!」

「由梨、行こう!」

「うん」