『何故逃げるのだ』



神様が解せないという顔をして私に尋ねる。


「…………」

『申してみよ』


答えられずに俯く私に神様は優しい声で尚も尋ねかける…

そんな神様に、私は観念して話すことにした。


ひと呼吸置いてから今の自分の気持ちを打ち明けた…。



あいつの告白は、あいつ自身の意志じゃないんじゃないかって……




…すると、

私の話を聞いた神様は、それはそれは盛大に笑いだした。


そして、笑いが治まると、息も絶え絶えという風に話し出した…




『何を言い出すかと思えば、そんなことであったか…


安心するが良い。

我はあの者にはなにもしておらぬ』


「…本当?」


『あぁ。

…それに元々、あの者は其方のことを好いておったぞ。

あの者と其方は結ばれる縁だったのだ…』


そう言って神様は私の頭をふわりと撫でた。

そして、小さく微笑んでこう言った



『…早くあの者の元に戻って気持ちを打ち明けてくるがよい。

したらば、其方に取り憑く天の邪鬼もすべて消え去るであろう…』