店を出た俺はふらふらと歩くばかりだった。何も考えず、ただ今だけはあの家に帰りたくなくて、この場所に留まりたくて随分寄り道した。
家までだいぶ近くに来た頃、初めて近所に子供向けの小さな公園を発見した。俺はそのまま回れ右をして誰もいない公園に入った。
公園の中にはブランコと滑り台、下がバネになっている動物の乗り物だけがあった。俺はベンチに座りそれを見て、小さい頃によく遊んでいた公園を思い出して懐かしく感じていた。
遠くの方から音が聴こえてきて耳を傾ければ、5時を知らせる音楽が響いていた。そうか、こんな所まで聞こえるのか、と懐かしい音を口ずさみながら考えていた。
俺は携帯を取り出した。画面を見ればメールが1件と着信が2件入っている。全て奈々からだった。俺は早速、奈々に電話を掛けた。奈々は2回目のコールで出た。俺は怒られると思って緊張していたが、「何…?」といつもと変わらない声音で返ってきたので拍子抜けしてしまった。
「今近所の公園にいるんだけどさ…、お前も来いよ」

