嗚呼、なんて優しい声なのでしょう。この学校にそんな声音の持ち主がいたでしょうか…。


私は瞳を輝かせて顔を上げました。


目の前には1人の男性。三十路を過ぎたような、オヤジ…。


オヤジ!?


そうなのです。私が心ときめかせて見上げたその先には、1人のオヤジがいました。


「はい、プリントがこっちの廊下まで広がっていましたよ」


私は、その人から目を離さずにプリントを受けとりました。


「もしよかったら、拾うの手伝いましょうか…?」


「…あ、ありがとうございます!!」


こうして、私たちは数分かけてプリントを拾い集めました。


私は、最後にまた、お礼を告げました。


「どういたしまして、」


その人はあの優しい声で言って、階段を昇っていきました。


それからです。


私はあのオヤジ、いえ、彼に、恋をしてしまいました。