腕に彫られた入れ墨。
近所のおばさん達のヒソヒソ声。

ぎゅっと、エルは強く目をつむった。


「……エルは、明日から別の場所で暮らさなくちゃ、いけないの」

ああ、やっぱり。

ひとつひとつ、ゆっくりと話すお母さんの言葉が胸に刺さる。

自分は他の人と何かが違うと勘づいてはいたが、どうして大好きな二人から離れなくてはいけないんだろう。
幼いエルにはまだ理解出来なかった。

だけど、嫌だと言えば、お母さんもお父さんも、二人とも余計に悲しむ。

エルは無理矢理、笑顔を作った。

「エルは強いもん。…大丈夫だよ」


突然、お父さんの顔が歪んだ。

「ごめんな…っ」


頬に一筋の雫が流れていた。
お母さんも手で顔をおおっている。


「…お父さん、お母さん泣かないで。
また、一緒に暮らせるんでしょ?」

エルはまだ何もわかっていなかった。

そんなエルを見て、二人はしばらく涙を止めることは出来なかった。