｢ったく…源さん何やってんだよ。職務放棄なんかして…あんな渡し舟しか乗った事無い女乗せて今度事故ったら永久に失業者やんか｣

ぶちぶち文句言いながら源さんのケータイに電話してみた。

｢あ…圭太か…｣

電話に出た源さんの声は、心なしか怯えたような感じ…

｢何やってんスか源さん…今日から川下り再開ってのに…｣

ちょっとハッパかけるつもりで一言言うと

｢俺は、もう漕がないぞ｣

そう言ってプツリと電話を切られた。

圭太は源さんの怯えた声を不思議に思ったが…

｢源さんに何があったか知らんけど…あの女と組むのって…ちょっと億劫やな｣

先行きの不安にそれ以上の詮索の余裕は無かった。