頭上に掲げられた櫂は静かに振り下ろされた。

全てをかき消す様に…

そして…瞬間的に凍らされた化け物は、塵の様に粉々に砕け散った。

「これで、この川も静かになる…」

全てが終わった筈だが…

「それより…舟に開いた穴は大丈夫なのか?」

未だに、それを覚えていた大学生が尋ねてきた。

「心配ない…先ほど化け物を凍らすついでに凍らせておいた…お前達を無事に岸に届けるまでは溶ける事などない」

私の言葉を聞いて安堵の表情を浮かべた大学生達は誰からか定かでないが、皆一様に

「助かった…」

と、かすれた声で呟いた。