考えるよりも先に体が動いた。

スコップを抱えたままパワーショベル運転席のドアを開き、素早く乗り込む。

「全く…!」

あれ程作業の後は、パワーショベルのキーは所定の位置に戻しなさいって仲間の作業員に言ってあるのに。

今日もキーはさしたままだった。

だけど今日に限っては、よくさしっぱなしにしたと誉めてやりたくなる。

キーを捻ってエンジン始動。

凶暴なエンジン音を立てて、パワーショベルは眠りから目を覚ました。

「さぁ!」

純がレバーを操作すると、パワーショベルのアームが大きく持ち上がる。

それはまるで、餌を求めて咆哮を上げる大型の獣か何かのようでさえあった。

「よくもここまでやってくれたわね!今度はこっちの番よ!」