そんな夜の世界で、天野はもう何年も生き抜いてきた。

女に貢がせる事しか能のないように見られがちなホストだが、彼らの世界もまた弱肉強食だ。

ノルマの果たせない者には甘い汁は啜れない。

客である女達にすら馬鹿にされ、売れっ子ホストのサポートばかりに回されて、雨の降る夜でも、自慢のスーツをびしょ濡れにしてキャッチ(道行く女性を店に勧誘する行為)に行かされる。

天国と地獄、明と暗がくっきりと分かれる世界。

そんな世界で、泥水を啜りながらも天野はのし上がってきた。

啜るものが泥水から甘い汁になるまで、彼もまた幾度となく客の女に地べたを這い蹲らされ、犬の真似事までさせられて、それでも耐え抜いてきたのだ。

煌びやかな世界で君臨する為に。

いつかこの夜の世界の頂点を極める為に。