混乱は歩道だけでなく、車道にも伝播する。

その場から離れようとする車の列。

しかし渋滞が緩和されている訳ではない。

強引に動こうとした車はその結果。

「くっ!」

純の乗る車と衝突!

両者の車は激しく損傷し、走行不能となる。

「何やってんだ馬鹿野郎!」

相手に罵声を浴びせつつ、純は携帯を片手に車を降りた。

この大渋滞なら、車より走った方が速そうだ。

携帯で自宅に電話しつつ、歩道を走り始める。

家で留守番している息子の雄大が心配だった。

しっかり戸締まりするように言わないと。

しかし…。

「どうしたの?何で出ないのっ!」

純は狼狽する。

留守番しているのだから、雄大は家にいる筈なのに!

…純はまだ知らない。

人々を食らおうと襲い掛かるイカレた連中は、あのバスの乗客だけでなく、既に美原市のそこかしこに蔓延しつつあったのだ。