屍都市

心花と聡もまた、大混乱する通りで愕然としていた。

「何だよあれ、聡ぁ!」

『曼珠沙華』の頭を張っている心花でさえ、流石に動揺は隠せない。

彼女はこれまで数多くの相手と殴り合いの喧嘩をした事がある。

他チームの暴走族、不良、チンピラ、時にはヤクザの構成員とも。

相手が誰でも、彼女は怯まず恐れず向かっていった。

その度胸と腕っぷしが心花の自慢だったし、それは聡を含める誰もが認めるものだった。

しかし…。

喧嘩で鳴らした聡ですら絶句する。

あんな重傷を負いながら、更に他人を襲って食うなんて普通じゃ考えられない。

あれじゃあまるで、俺の好きなホラーゲームに出てくる…。

「とにかく!」

聡は心花の背中を押す。

「ここにいたらまずい!俺らもとりあえず逃げるぞ!」