屍都市

「あ…あわわわわわ…!」

噴き出す鮮血、木霊する悲鳴。

その光景を見て、山田がとうとう腰を抜かす。

映画の撮影などではない。

れっきとした現実。

バスから降りてきた乗客達はどうかしていた。

負傷を物ともせず、白濁した目で凝視し、突然周囲の人間に食いかかり始めたのだ!

「逃げろ!逃げろ!」

警棒を振るって少しでも被害を食い止めようと奮闘しながら、秀一が叫ぶ。

彼の指示に従う事がようやく最善だと理解し始めたのだろうか。

「華鈴!」

理子が愕然としている華鈴の手を引いて走り始める!

続いて腰を抜かしたまま、四つん這いで這い始める山田。

…恐怖は連鎖する。

突然の降って湧いた惨劇に、人々は我先にと逃げ始めたのである。