幸羽のポケットでも、携帯が着信していた。

「理子ちゃん!駅で脱出口が見つかったって!」

彼女は自分の後ろをノロノロと歩く理子に語りかける。

「……」

だが理子には、まるで聞こえていないかのようだった。

「理子ちゃん、しっかりして!ほら、駅に急ぐよ!」

理子の手を引っ張る幸羽。

しかし。

「小野さん一人で行って下さい…」

まるで死んだような瞳で、理子が小さく呟く。

「小野寺のおじさんが死んで…華鈴が死んで…」

その瞳から、静かに涙が伝った。

「私…もう生きていたくないです…」