悪臭漂う下水道。

エンジニアブーツを汚水の中に浸けて、水音をさせながら聡は前進する。

歩きながら、彼はこの先遭遇するであろうゾンビ達への対策を講じていた。

左腕にはめている、金属部品を多用した頑丈そうな腕時計を外し、右手の甲にはめ直す。

ちょうどメリケンサックのような感じだ。

この状態でゾンビを殴れば、打撃の威力が向上すると同時に拳を保護し、ゾンビから寄生虫を植えつけられる確率も多少は減る。

更に履いているジーンズから財布と繋げてある鎖、ウォレットチェーンを外す。

金属製で、比較的太目の鎖だ。

これを左手に握り、武器として使用する。

それなりの長さがあるので、鞭のように使用すれば距離をとってゾンビに攻撃できる。

腕時計にしてもウォレットチェーンにしても、中学の不良時代に培った喧嘩の技だ。

心花は喧嘩に美学を持っているのか、相手が武器を使わない限りは自分も素手での喧嘩にこだわっていたが、喧嘩はルール無用、卑怯汚いは関係ない。

一人で大勢の人数を相手する事もあった聡は、こういった事に長けていた。