屍都市

「あ…あ…!」

恐怖と戦慄。

ガクガクと震えながらよろめく理子。

その背中に、ドンと何かがぶつかる。

振り向くとそこには、見覚えある男。

「な、梨本先生…!」

それは、理子が所属している陸上部の顧問である教師。

しかし見覚えがあるといっても、今の彼の姿は記憶とは程遠い。

片目がなくなっている。

頬肉が抉られている。

腕の骨が露出している。

普段との相違点を挙げろと言われればキリがない程に、その肉体は激しく損傷していた。

「いっ、いやあぁあぁあっ!」

慌ててかつての顧問の成れの果てから遠ざかる理子。

だが遠ざかるといっても、どこに逃げればいいのか。

前門の虎、後門の狼。

既に理子はゾンビ達によって挟み撃ちにされていた。