屍都市

確かにこの学校は避難所として機能していた。

多くの被災者達が避難してきて、怪我人の手当てをしたり、炊き出しをしたりしていたのだ。

そう…『怪我人の手当て』をしていた。

ゾンビに傷を負わされた人間の手当て。

ゾンビに傷を負わされるという事がどういう事か。

秀一から事前にメールを受けていた理子にはすぐ理解できる。

どんなに軽傷だろうと、ゾンビによって傷つけられた人間は寄生虫を植え付けられる。

その寄生虫によって死に至り、やがてはゾンビとして甦る。

この学校はそうした怪我人によってゾンビが蔓延し、何とか生き残った避難者達さえも全滅させられたのだ。

…逃げ場などどこにもありはしない。

避難所さえゾンビによって死肉の色に染め上げられてしまう。

この街の人間に、安住の地などありはしないのだ。