たった一人。

その事が、急に理子を不安にさせた。

華鈴、きっと傷ついてた。

笑っていたけど、私の事嫌いになったんだ…。

そう思うと、今まで引っ込んでいた恐怖心が急に増大する。

周囲がやたらと気になり、キョロキョロと辺りを見回しながら歩く。

そこの物陰にゾンビが隠れているのではないだろうか。

次の曲がり角でゾンビと鉢合わせするのではないだろうか。

背後からゾンビが迫っているのではないだろうか。

風の音、遠くから聞こえる唸り声、阿鼻叫喚。

何もかもが理子の恐怖を助長する。

華鈴と一緒にいる時の快活な少女とはまるで別人。

頼れる者はもう誰もいない。

(小野寺のおじさん…!)

優しく頼りになる親類、小野寺亮太に買ってもらった入学祝いの腕時計。

それをギュッと握り締めながら、理子はゆっくりと学校への道を進んだ。