殺意の塊のようなライオンの白濁した眼が、秀一を睨んだ。

体が震える。

死に直面すると、こんなにも恐ろしいものなのか。

秀一は梨紅の事を思い出す。

あいつすげぇよ…よくこんな怖い思いしながら俺を送り出せたな…。

そんな事を考えながら、彼はポケットから携帯を取り出す。

死ぬ前にやっておかなければならない。

仲間達全員に、一斉送信でメールを送る。

文面はこうだ。

『動物園は危険だ。絶対に近づ』

そのメールを書き終える暇もなく。

「がはっっっっっ!!」

ライオンの鋭く太い牙が、秀一の首筋に突き立てられる。