何て事だろう…。

目の前に立つ己の死を具現化した姿…ゾンビ化した雄ライオンを見て、秀一は青ざめる。

これまでに彼が仕留めてきたゾンビとは訳が違う。

もう彼が握っている警棒で太刀打ちできるような相手ではない。

ただでさえ人間を歯牙にもかけない肉食動物。

それがゾンビとなる事で、不死の化け物となったのだ。

「雄大」

秀一はあくまで冷静に、隣に立つ幼い子供に言う。

「こりゃあ奥の手を使うしかないな」

嘘だ。

それは雄大を安心させる為に口にした出任せ。

…奥の手など、秀一にはなかった。