甘くも苦い誘惑に溺れて



「心配するのは当然の事よね…。常に死と隣り合わせの世界なんだから…銃を握るのが、当たり前の世界なんだから…」


「……………」


「散々心配かけておいた癖に…私が引退を決めた時…父も母も…泣いてた…。中途半端に引退した私と一緒に…悔し涙を流してくれたのよ…」




私の手を握る彼の手に力が篭る…痛い程にぎゅっと強く握る彼…。



きっと…この人は…。



私の家族がこの世に居ない事を…知ってる。



そんな気が、する。