甘くも苦い誘惑に溺れて



「…優菜…ありがとうな」


「…本当の事だから…私、嘘なんてついてないから」


「…わかってる」




本当に…これでいいのよね…。



婚約破棄だなんて、まだ…信じられないけれど。




「……これ」




拓也は立ち上がるとポケットから一通のチケットを取り出して、私へと差し出した。




「……これは…」


「ニューヨーク行きの飛行機搭乗チケットだよ。今ならまだ間に合う…行っておいで」




どうして…こんな。



いつの間に…こんな事。