私がいつも見ているモヤに似ている。

驚きを隠せない私はその絵の横に書いてある文を読んだ。

─悪魔に取り憑かれた人間は黒い闇に覆われる。

本を投げ捨ててカウンターに置いてある鞄も持たずに部屋を飛び出した。

所詮、本の作者の幻想に過ぎないかも知れないけど、今起きている事が本の事とあまりにも似すぎている。
もし南が悪魔に取り憑かれているとしたら、南が危ない!

ブレザーのポケットから携帯を取り出して南に電話を掛けた。
だが、何回鳴らしても繋がらない。
いつもだったら塾だろうと直ぐ出てくれる。
最悪にも、今日に限って出てくれない。


『お願い南、無事でいて』


いつ電話がきてもいいように携帯を握り締めたまま、南の通う塾の道のりを一直線に走り続けた。