《…ミツケタ》
直接脳に響くような低い声に背中がゾクリとした。
後ろをバッと振り向くが誰もいない。
よくわからないけど、とても嫌な感じがした。
「莉菜?」
『ううん。何でも…』
隣にいる南を見て言葉を失った。
嘘。
どうして…っ、
「莉菜?」
南の体の周りにはあの黒いモヤが漂っていた。
『…う、ううん。ほら!行こ!』
「うん?」
不安になる気持ちを表情に出さないように抑え、笑顔で南の背中を押した。
この黒いモヤは凄くいけない気がする。
でも、どうしたら消えてくれるの?
今にも黒いモヤに飲まれそうな南を、ただただ見つめる事しか出来なかった。
それは放課後になっても消える様子は無い。
「莉菜。これお願い」
『うん』
誰もいない図書室で、図書委員の私達は本の整理を担当の先生に任された。
あれから南のモヤは消える様子も無く色が濃くなっている。
このままモヤが南の体を包むぐらいに真っ黒になったらどうなるのだろう。
言いよれない不安が私を襲う。
「こっちは終わったけど?」
『私はまだかかるから先に帰っていいよ?今日塾でしょ?』
「うん。ごめんね」
『平気平気。もう少しで終わるし』
カウンターの上に置いてあった鞄を手にして、棚で整理している私を前に手を合わせて再び謝った。
『気をつけてね』
南の体を取り巻くモヤをチラッと見てから言った。
「うん!また明日ね!」
それに気づく様子も無く、南はいつも通りの笑顔を振る舞って足早に出て行った。

