カーテンの隙間から射す朝日に自然と目が覚めた。


『んん~、はぁっ』


体を起こして背伸びをしてまた今日の1日が始まる。

佐藤莉菜。
ごく普通の高校2年生。

寝間着からブレザーの制服に着替え、胸下まで伸びた茶色の髪を高い位置で一つに結んだ。


「莉菜ー!そろそろ出ないと遅刻するわよー!」

『はーい』


下から聞こえるお母さんに返事をして、鞄を片手に部屋から出て階段を降りた。
下に降りてから簡単に身支度をして玄関に向かった。


「今日パパも私も帰り遅くなるから、一人でお留守番よろしくね?」

『もう、小さい子供じゃあるまいし、一人で留守番ぐらい出来るよ。それじゃあ、行って来ます』

「行ってらっしゃい」


お母さんに見送られながら、私は家から出た。

…あ、まただ。

目の前に歩いている女の人の周りに黒いモヤが漂っている。
この人に限らず横にいるおばあちゃんも。

あの変な夢を見てからだ。
この黒いモヤが見えるようになったのは。

白く綺麗な羽、白い丈の長いドレス、薄茶色の髪に赤い瞳。
その天使みたいな女の人が私の額に指を当てた瞬間、眩い光に包まれた。
暖かくって、まるで夢じゃないような現実感。


『偶然なのかな…?』

「なーにが?」


突然聞こえた声にビックリして振り返った。


『南か~、ビックリさせないでよ~』


胸に手を当てるとドクドクと鼓動が伝わった。
驚いている私を見て「ごめんごめん」と笑って謝られた。