『南ー!いたら返事してー!』


奥へ奥へと進んで行っても、一向に南の姿を見つけられない。
しかも日が沈み、路地裏も先が見えない。

あの声は気のせいだったのかも…。

先に進むのを止めて引き返そうとした。


《リ…ナ…》

『南!?』


顔を上げて前を見ると、奥に微かに人影が見えた。


『よかった!ずっと探したんだよ!』


ゆらゆらとこちらに来る南を見て安心の息をついた。
でもお互いの距離が数メートルになって異変に気づいた。


『み…なみ…?』


私は驚いて半歩後ろに下がってしまった。
南の背後から黒い影が浮かび上がっていたからだ。
しかも白く切れ長な目と吊り上がった口までついている。
あまりにも突然の出来事に悲鳴も上がらない。


《ヤハリオマエ、ワタシガミエルノカ?ニンゲンノクセニ》


南の口からではなく、背後の影が口を動かして喋った。
私がさっき聞いた笑い声と一緒の機械みたいな声音。


『あなたは悪魔なの?』


カタカタと震える腕を押さえるように、南の鞄を握り締めながら勇気を出して聞いてみた。