とりあえず気分を落ち着かせよう…そう考えた彼は自販機に立ち寄り超高級スペシャルブレンドコーヒーのボタンを押した。

ちょっと待たなくては、ならないのが玉にキズだが忙しい現代人の代表たる外科医ならば、時間に流される事なく一時の心のゆとりを持ちたいものである。

そして辺り一面にコーヒーの豊潤な香りが漂い始めたのを見計らい取り出し口に手を伸ばす。

手に取った紙コップ越しに暖かさを感じたその時

「はい、どいたどいた〜」

とガラガラ音を立てて掃除機が通過した。

いうまでもなくさっきの女だ。

くっ…あの女…よりによって外科病棟担当か…

彼は思わず顔を伏せた。