カウンターの前まで行き、笑顔の店長に挨拶をし


「今日は無理言ってすいません。」


頭を下げた。


「大丈夫!常連の葵ちゃんの頼みだからね。」


ウィンクをした店長に「ありがとうございます」と言う。


「じゃぁこれね。」


カタンッとカウンターに置いた大きめのグラス。
中には水が入っていた。


「本当にいいの…?」


グラスを見つめる私の顔を覗き込む店長に「はい」と笑顔を向けた。


そして、上着のポケットから電源の切れた携帯を取り出し迷う事なく


---ポチャン…


グラスに沈めた…


「あ~ぁ…」


「ふふっ」


グラスに沈んだ携帯を見て口から笑いが漏れた。


「後は宜しくお願いします。」


「はいよぉ。」


「じゃぁ、私は行きますね。」


頭を下げ、店長に背を向けドアへ向かって歩きだす。


「葵ちゃん!また来てね!」


ドアを開けたと同時に店長の声が聞こえ、後ろを振り返り


「はい!」


笑顔で手を振り店を出た。



カウンターに携帯を残して--