セミダブルのベッドで寝た俺の夢の中には葵は現れなかった。
目を覚ました時、現実はそんな物だと諦めた俺は葵との思い出の場所へと足を運んだ。


目の前には満開の桜。

何一つ変わっていないこの場所に涙が出そうになった。

毎年一緒に見た桜を今年は一人で眺めた。


桜の木の前で右手の小指を見つめ昔を思い出した。


桜の木の前で俺の右手の小指に左手の小指を絡めた葵。


(ねぇ、しんちゃん。
私達は桜の木に引き付けられ出会い、付き合えたんだよ。
だから私達の糸は"桜色の糸"だね!)


--あお…


俺達の糸はどこで切れてしまったのだろうか…


俺は絶対に切れた所を見つけだしてやる。


そしたら解けやすい蝶々結びじゃなく、俺の手の力を全て使って堅結びをしてやる。



---だから…






「俺の隣に戻ってこい…」





心の目から流れた一筋の涙は、2人が出会った場所へ吸い寄せられるように消えていった…