「藤森せんぱーい!!卒業おめでとうございまーす!」


中央の道を退場口へ向かって歩いていると、下級生の席から声があがった。
その声で我に返り、ニヤけた顔を引き締める。


重苦しい空気の体育館から出ると寒い空気が体を刺した。
息を吸い、吐くと白くなった。


「--さみぃし」


体育館で温まった体は一気に冷え、足早に教室へ向かった。




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「先輩!!ボタンください!」


最後のSHRを終え、卒業証書の入った筒を片手に正門へ向かっていると下級生や同級生の女子に囲まれた。


「藤森くん、名札ちょーだい!」


「--なっ!?」


群れに揉みくちゃにされながら大声を張り上げる葵の姿に驚く。


--しかも"藤森くん"って…


「はぁ…」と溜め息を吐き葵の腕を掴み自分の方へ引いた。