「--卒業生退場。」


司会の先生の声で一組から順に退場をし始めた。


五組の俺は泣きながら退場して行く生徒を他人事のようにボーッと眺める。


--俺は今日中学を卒業する。


壇上に上がり校長先生から直接貰った卒業証書は席に戻る途中で先生に渡し手元にはなく、自分が卒業する実感が全く湧かない。


この日をどれだけ待ち望んでいたか。



--今日俺は…


隣に座っているクラスメートが椅子から立ち上がったのを横目で確認し、慌てて立ち上がった。


担任を先頭に出席番号順で退場する。
先に退場した葵を目で追いかけた。
葵は目を赤くして、ハンカチで目元を押さえていた。
葵の涙を見て少しずつ実感が湧いてきた。


葵と過ごした中学生活。
来月で付き合って三年が経つ。
長いようで短かった三年。


高校は有名な進学校へ入学が決まった。
来月から新しい制服に身を包み葵と一緒に新しい学校へ通う。
葵の制服姿を見るのが楽しみだ。
制服姿を想像して顔がニヤけた。