「ふぅ~ん…じゃぁ入院中の彼氏はどうなってもいいんだ?
俺さぁ、大八木高校仕切ってるんだよねー。ちなみに高二。」


ニヤニヤ笑いながら言う男に吐き気が込み上げる。
体はガタガタ震え血の気が一気に引いた。


「---っ…」


"大八木高校"は地元で一番ガラが悪く不良高。
殴り合いの喧嘩をしたことのない心が、この男を相手にしたって勝てるわけがない。


「ど、どうしたら…」


「う~ん、まずは別れて。」


恐怖で溜まっていた涙が男の言葉によって溢れ出した。


「その顔そそるね。」


男は私の頬に流れた涙を手で拭った。
ビクッと肩が上がった私を嬉しそうに見る。


「--わか、れたくない…」


「じゃぁ、今から仲間連れて病院行ってくっかなー」


「---ゃめ…」


「じゃぁ別れな。」


---しんちゃん…


(来年も一緒に桜見ような…)


頭に過ぎる心との約束。
今は十月の中旬、桜が満開になるのは…


「……半年」


「はぁ?」


「半年私に時間をください。」


流れた涙を拭い、男を睨み付け言い切った。