「じゃぁ、しゅっぱーつ!!」


掛け声と共に自転車を勢いよく漕ぐ。
その瞬間、葵が抱き着くようにしがみつく。
抱き着いて欲しくて、わざとやっていることを葵はきっと知らない。


10月中旬で肌寒い季節。
風が当たり


「--さみぃーし!

あおがあったけー!」


と叫ぶと腰に回っている腕が少し強まった気がした。
背中に葵の温もりを感じながら


「ごらぁー-!!藤森、高橋!二人乗りは禁止だぁぁーーー!」


今日も正門に立っている学年主任に注意され葵の家へ向かって漕ぐ。


受験を控えている俺達は既に部活を引退したが、ほぼ毎日顔を出し一・ニ年生に混じり部活終了時間までバスケをしている。
秋は日が落ちるのが早く、部活が終わり帰る頃には日は落ちて暗い。


いつもの坂に差し掛かった時に


「しんちゃん!」


「んぁ?」


「ゆっくり帰ろう?。」


「なんで…?」


葵にスピードを落とすように促されたがブレーキをかけることはなかった。