瞼を上げると同時に、強い風が吹いた。


視界に写る桜の花びらと長く輝く金色の髪。


綺麗な髪に目を奪われ、風が止んだのに気づかなかった。
気付いた時には澄んだ青い瞳と目があっていた。


ドクンッと胸が高鳴る。
暴れだす心臓をごまかすように「誰?」と彼女に声をかけた。


「あっ、私は、高橋葵…です…」


ピンク色の唇が動き、彼女は震える声で名乗った。
声は震えていたが綺麗なソプラノ声で体の奥底まで響く。


緊張し、ビクビク震える彼女。
その姿が可愛くて抱きしめてしまいそうだ。


沈黙が続き、穏やかな風が吹く。
太陽に照らされポカポカと暖かく再び睡魔に襲われ、このまま抱きしめて一緒に眠ろうかと思い始めた。


「--あなたは?」


睡魔と戦っていると横からソプラノ声が聞こえ、視線を向ける。
そこには頬をピンク色に染めた彼女の姿。


「藤森 心…」


名前を教えると緊張していた顔が笑顔に変わった彼女を見てドクンッと胸が高鳴った。