「耕造、本気の恋の病にかかってしもたから」
 

どうやら沢で車輪と口付けを交わしているのを麻に見られたらしい。


でも恥ずかしいとは思わなかった。


「私だって好いた男くらい出来たから、あんたの相談にのってやろうと思って」
 

麻は今までに見たこともないくらい生き生きとしていた。


それが僕は嬉しかった。


麻と話すのが楽しいと思ったのはどれくらいぶりだろうと考えてみたら、三年か四年ぶりのようだった。


でももしかしたらもっと短い期間だったかもしれない。


それくらい長いように感じたというだけだ。


「どんな男なんや?」
 

僕が聞くと、麻はとても言いにくそうにした後、小さな声で、


「異人なんや」


と言った。
 

車輪を混血の悪魔と思っていた麻が、異人を好きになるとは思わなかった。


しかもその男には妻がいるという。