十三の時、車輪とばかり話すようになった僕に腹を立てた麻は僕の頬を叩いてその事実を告げた。


なんて浅はかで下賤で、醜い女なのだろう。


純血の日本人の麻と混血の車輪。


心根の美しいのは僕の目から見なくても明白だった。


だけど、いくら醜い心を持った女でも、世間が肩を持つのは決まって麻の方なのだ。


「男は売り女が好きやからなあ」
 

麻がそういうと、傍にいた二人が口に手をやってくすくすと笑った。


その麻の姿に、甲斐甲斐しく僕の面倒を見てくれていた頃の面影はなかった。
 

麻が言ったあの時の言葉がすべて本当だったとは思わない。


自分の方を見ようとはせず、悪魔の子と呼ばれ、妬まれている美しい車輪に僕が心を奪われたからだろう。
 

車輪に出会った日を思い出す。あれは夜の暗い散歩道だった。