煩い声があちこちからする


好奇心と恐れと嘲りの入り交じった声が







「さぁ、ご覧下さい!世にも珍しい黒い翼!」



そう煽りたてる男も、集まっている人々にも、白い片翼がある



檻の中で膝を立てて頬杖をつく
どんな視線を送られようと何の感慨もわかない


あるのは首に付けられた鎖の冷たい感触だけだ


団員の男が視線で合図してくる
それにやる気もなく答えて翼を広げる




シャラリと翼に付けられたキラキラしい飾りが揺れた


ひどく珍しい漆黒の翼と、幼さを残した端整な顔立ちの少年に、集まった人々は魅入られたように目を奪われる



見たこともないその色と感情を見せない少年はまるで人形のようだった






突き刺さるような視線も、自分を物のように扱う人間もその全てが、彼にとっては日常的な事でしかなかった