水が滴る音がする



静謐な空気が漂う空間
石造りの白い部屋の中央には、広い水浴び場があった



まだ十、四五歳程の少年が服を着たままその水の中に立たずんでいる



腰まである水にただ静かにたたずむ少年の髪は、薄い光も弾く金色


軽くくせのある髪には水滴が滴っている
整った顔立ちはまだ幼さを残しているのに、そこにある表情は歳にそぐわない聡明さを感じさせる




「……カムイよ」



厳かに響く声に顔だけで少年は振り返る
そこには白い服に身を包んだ老人が立っていた


その背には歳を重ねたかのような白い翼があった




「……時間ですか?」



老人を見た少年……カムイは背を向けたまま静かに呟いた



老人はその背を見つめ、痛ましいものを見るように眉を寄せる



老人を見つめる瞳はただただ静かだった



これから待ち受ける自身の運命を少年は知らないわけでわないのに………





カムイの瞳の色は深い紫紺


『破滅の紫』


そう呼ばれる不吉な色彩






カムイはその瞳を細めて薄く微笑んだ