まず、目に飛び込んできたのは檻だった
中には見たこともない動物が横たわっている
「なんだい、珍しいかい?見せ物小屋だからね。当たり前さね」
くつくつと笑いながら、恰幅のいいおばさんは馬鹿にしたように言う
予想はしていた
あの町から出てくるのは、父親が言っていた見せ物小屋の移動馬車なのではないかと
だが、あまりあの町の周辺にいるのは危険だ
それに、本当に食べ物はないに等しい
早く次の町に行くには手段は選んでいられない
「その辺に座ってな」
言われて、布の被せられたひときわ大きな檻の前に腰を下ろす
「あんた旅のもんかい?そんなマント羽織って」
「はい、遠くから旅をしてきました」
そう答えながら、羽織ったマントを整える
これは紅い翼を隠す為のものだ
見せ物小屋の馬車かもしれないなら、この翼は目立ちすぎる
隠さなければ捕まってしまうかもしれないから
頭も同じくバンダナで隠している
しばらく馬車は進み、手持ちぶさたなフェニは馬車の後ろへ行き外の景色を眺めていた


