夜の虫の音
満天の星空
それらを感じることなくフェニは走っていた
『……そうね』
きっとわかっていた
いつかはこうなる事を
喉が焼けるように熱く、荒い息を繰り返しはく
道の傍にある木に背を預けるようにもたれた
小さなバッグになるべく必要な物を用意していた
一人になっても困らないような物を
そういう事なのだ
不意に涙が零れ、あわてて俯く
自分はいらない子だった
そして、自分も親なんていらないと思っていたのだ
その事実に気付きたくなかった
背中にある紅い翼が前に垂れかかる
紅い紅い翼……
こんなものの所為でどれだけ辛い思いをしただろう?
石を投げつけられ、町から追いやられ、両親からも疎まれて………
膝を抱えてフェニはすすり泣いた
なぜ泣いているかわからない
けれど、知っていたのかもしれない
親なんていらないと思いながら
一人ぼっちは嫌だと
だだをこねる子供のように
そんな自分が一番嫌い……
紅い翼
それで身体を包むように広げ、膝を固く抱き締めた


