目の下にはうすくクマのようなものもある。


瞳には何も浮かんでいない。感情が止まっているかのようにその目はただ宙をさまよっていた。


私はまたイラついた。


「パト!」


気がついたら叫んでいた。


「はい、チャーでたよ。」



私は奪うように携帯を受け取り、開口一番叫んだ。


「死ねバカ!」


「な、なんだよいきなり。」


受話器の向こうであいつがたじろぐのがわかったが構わずまくしたてた。

「なんであんたはいつもバカなの!なんでこんなことするの!」


「落ち着けって。そりゃお前が子供嫌いなの知ってるし悪かったと思ってるよ。だけど…」


ブチギレた。


「言い訳なんて聞いてない!つかなんでこの子をそのままにして行くのよ!」


「え?」


ありえない!


「私は子供が嫌いよ!ちなみにあんたみたいなバカもね!この子みなさいよ!雨でびしょ濡れだし顔色も悪いわ!ほうっとけば風邪ひいちゃうでしょ!こんな小さな子なんだから抵抗力だって低いわ!なんでちゃんと介抱してあげないの!」


ありえない!


「え、だって…おれバイトあったし、マキにまかせれば平気かなって…」

これじゃまるで、


「私がすぐ来れなかったらどうしたの?そのまま置いてくの?あんたが拾ったんだからちゃんと責任もて!」


あの時の、


「え、えっと…え?そっちに怒……ごめん」


自分に重なって…



「うっさい黙れ!」


自分でも支離滅裂なことを言ってるのは分かってた。バカに怒り全てをぶつけても、また沸々とこみ上げてくる熱量のおかげで全く落ち着けない。

パトに視線をずらす。
なんであんたまで面喰らったような顔してるの。

鍵をパトに投げた。


「すぐにその子うちにいれて。あとお風呂にお湯ためて。」


「わかった。」


パトが抱き上げようとしてもその子は全く動かなかった。