―――…………



答えは否ではある。

それは何故か??


四則演算の[+]と[−]の2つだけで簡単に説明ができる。

端的に言っちゃえば、椎名ちゃんが[+]で後の2人が[−]ってだけなんだよ心情的にね……


「わぁー、しーなちゃん、今日はおにぎりなんだぁ〜。美味しそうだね〜」

「うん。今朝は時間がなくてさ、こんなのしか作れなかったよ」

「……………」モゴモゴ


現在、桐野くんは3人の女の子と一緒に昼食を取るという、端から見れば「どこの少年マンガの主人公だよ!?リア充、燃えちまえ!!」っというハーレム帝国を築いているんだが……

如何せん、現実はもっとシビアだ。

未来のお嫁さん(妄想)である椎名ちゃんとお昼を共にすることは至高の極みだが、席順に問題がある。

4つの机を縦横2×2で並べているオーソドックスな配列だが……


オレの対面に位置するのは柿金。椎名ちゃんではない。

昨日と同じく“幻のコッペパン”をかじりながら椎名ちゃんと談笑。

……っつーか、お前はそのパンをどうやって手に入れた!!??お前の教室には転送魔法陣でもあんのか!!??


オレの右側に位置するのは[梧 清花]。椎名ちゃんではない。

相変わらず、左手で頬杖をついて、ツーンとした態度で外方(そっぽ)を向いてしまっている。

ただ、やはり腹は減っていたらしく、オレが押し付けたメロンパンを右手で毟(むし)りながら口に運び、コメカミの辺りモゴモゴしているのが分かる。


そして、オレの右斜め前に位置するのが椎名ちゃん……

銀紙に包んだおにぎりが2つと、フードパックに梨か林檎のような果物が入っているのが分かる。




「……………」


遠い……

椎名ちゃんまでが遠い……


前はビッグマウンテン。

右はディープサブマリン。


机は隣接している筈なのに2人に開いた距離は万里の長城とタメ張れるよ……


(しかも厳密には隣接すらしておらず、机が丸角の設計であるため、中央にひし形の空洞ができている)