「ッ……!!!!」
[梧 清花]はオレの発言に珍しく目を大きく見開いて驚きの表情を作る。
「へぇー…何だ、思ったより馬鹿じゃないな。だったら話が早い」
オレに嘲笑を交えた口笛で称賛を送り、右手でボリボリ頭を掻きながら独り言を始めた。
「なるほど、なるほど。ならあたしがワザワザ出向く必要はなかった訳か……畜生、“清花”の奴……一々大げさ何だよなぁ」
「……………」
さぁ、状況整理の時間だ。
これまでの[梧 清花]の不審な行為、言動に納得いく解答を出そうじゃないか。
[梧 清花]は一見、情緒不安定な豹変癖であるが、それだけで片付けるのは安直過ぎだ。
人間には本来、表と裏の顔があり、それで“人格”という代物を形成している。
稀に表も裏も偽りで、まるっきり何も見せずに[人]を形成してしまう野郎もいるが……まぁ、そんなことは今はどうでもいい。
だがしかし、[梧 清花]は裏も表も丸見え。コイツはあまりにも不自然。
裏が“裏”と成り立っていない。おかしくもなるはずだ。
だから、オレは[梧 清花]という人物は2人居て、交互に成り代わっているのではないかと考えた。
しかし、コレは物理的に不可能ときたモンだ。
世界の物理法則とは偉大な物であると賢人は良く言う。「物理的にムリ」と言っただけでそれが[理屈]になっちまうワケだからな。
考え得る可能性はあと1つ。
[梧 清花]は偉大な物理法則により“1人”しかこの世に存在しない。
にも関わらず、[梧 清花]は[人]としての人格が正常に形成されていない。故に“1人”じゃない。
“1人”なのに“1人”じゃない。
“1人”しかいないのに“1つ”の人格じゃない。
つまりだ――……


