何でもそのパンは、学校給食にもよく出る安っぽい何の変哲もない普通のコッペパンに、
某所で飼育されているという最高級の牛様から取れる最高級の牛肉が、
赤道直下で栽培された味わい深いフレッシュな野菜様に包まれ、
何だかよく分からん“X”なる香辛料で味付けされた
ゴージャスを通り越して悪趣味なパンが販売されているんだとか。
しかも、店頭に並ぶのはたった2つ!!!!
お値段なんとお一つ[1200円]!!!!
桐野くんの大好きなカレーパンのおよそ10倍の戦闘力だ。
(ちなみに、これは本来なら[安過ぎてビックリ]な代物らしい)
だが、このパンは大変希少らしく、その姿を見た者は極わずか。
わずか過ぎて存在すら疑われているらしい。
噂によると、特定の誰かが何らかの方法で誰よりも先に売店に現れ、2つまとめて買い占めているらしい。
嘘みたいな話だが、この噂の出どころが、此度の転校生来校を予期した[クラスの噂好きの女子]なのだから、その信憑性はエベレストのように高い。
桐野くんも噂が気になって売店のオバチャンに質問してみたが、美しいマダムスマイルで上手くかわされた。
(不覚にもちょっとときめいた)
いつか、このパンを手中に収めることが、桐野くんの高校三年間の目標である。
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