「俺の好きは結局無駄なんです。
好きと言っても信じてもらえない。
まるで、狼少年みたいだ。」
「狼少年・・・?」
「知りません?イソップ童話なんですけど。」
「どんな話だ?」
「哀れな少年です。
昔、羊飼いの少年が「狼が来た」って嘘吐いて周りの大人を騙して、
本当に狼が来て羊が襲われて、けど、大人には信じてもらえず、
羊を食べられてしまう話です。」
「自業自得」
「そうです。
だから俺も信じてもらえねえんですよ。
俺も・・・、哀れだ。」
「なるほど、ね。
悲劇のヒーローってわけか。」
「はぃ?」
「無駄だ、無駄だ、言ってばっかで何も行動しねぇ。
自分が傷つきたくないから、これ以上惨めになりたくないから。
そればっか言って、表面上はなにもないフリして、
周りに心配かけて、自分は可哀想だって?」
「ちが・・・ッ」
違う、なんて言えなかった。
先生の言ってることがもっともで正論で・・・、
俺の心に冷たくささるから。
「否定なんてできねぇだろ。
お前の気持ちは嘘じゃねぇのに、
それを嘘にしてんのはお前だろ?」
「・・・。」
「信じてもらえねえなら、お前の本気を見せろよ。
じっとせずに行動しろよ。
お前が、今ここに居るのは、周りに支えられてるからだろ?」
「・・・。」
「だったら、ぶつかってこいよ。
砕けるって分かってても、ぶつかる方が俺はカッコいいと思う。」
何も言えなかった。
更に先生は爽やかに笑ってこう言った・
「まぁ、落ち込むならさ、その周りが
ちゃーんと立ち直らせてやるよ。
そうやって人は成長するわけだし?」
冷えて固まった俺の心を溶かしていく。
大丈夫だ、と言われてるようで安心する。


